イギリスでのピアノグレード(Practical Grades)を受検しました!
イギリス在住の10歳の生徒さんが、ピアノグレード6にMeritで合格しました。大変いい評価をいただき、今回はDistinctionまでわずか数点でしたが、グレード6という難しい試験に挑戦し、きちんと合格できたこと、素晴らしいと思います。
ピアノグレードは、6から課題曲だけでなく、スケールや口頭試問、初見もレベルがぐっと上がります。また事前に、音楽理論のグレード5に合格している必要があります。
音楽理論を集中レッスンも受講しながら、同時にピアノの試験準備も進めてきました。
学校や他の習い事もある中、とても頑張りましたね!
今回は、グレード6のPractical Grade(対面試験)について、詳しく書いていきたいと思います。ぜひ最後までご覧ください♪
↓今回ご受講いただいたレッスンはこちら
<英国王立音楽検定(ABRSM)受検のための60分ピアノレッスン>
初見演奏・口頭試問、音楽理論の指導も取り入れたレッスン
ABRSM(英国王立音楽検定)とは?どんなレベルの検定?
ABRSM(英国王立音楽検定)とは、イギリス発祥の音楽検定です。
イギリスだけでなく、日本はもちろん世界各地で受検できます。
毎年約90ケ国で実施され、毎年約63万人以上が受検する、世界最大規模の検定です。
その歴史は驚きの120年以上で、日本のYAMAHAのグレード試験のモデルにもなっているそうで、グレードは1から8まであります。
グレード8は日本でいう音楽大学の入試レベルと言われており、内容は多岐に渡るため、難易度も高い試験だと思います。
グレード6~8はレベルがぐっと上がり、受検前に、音楽理論のグレード5に合格している必要があります。
音楽理論のグレード5は、音楽高校・音大受検レベルの内容なので、演奏だけでなく、ある程度高度な音楽知識も身に付けていく必要があります。
今回の生徒さんは、ピアノグレード6の受検前に、集中的に音楽理論グレード1から5の内容を勉強し、無事Discintionで合格していました!
2023年2月現在、ABRSM(英国王立音楽検定)のピアノの試験は、2種類あり、お好きな方法で受験可能です。
1.Practical Grade
試験日に試験会場に行き、試験官と1対1で試験を受けます。
課題曲3曲だけでなく、たくさんのスケールやアルペジオなど、初見、新曲視唱なども含む口頭試験も含まれています。
2.Performance Grade
ご自宅などお好きな場所とピアノで撮影し、課題曲3曲と自由曲1曲のビデオを提出します。その際ビデオの編集はできないので、必ず4曲通して演奏したものを提出しなければいけません。Practical Gradeのように、スケールなどや口頭試問などはありません。
お住まいの国や環境、目的に合わせて、受検方法を選べるのがいいですね!
グレード6の課題曲はどんなレベル?課題曲を見てみましょう
ABRSMのグレード6はどんなレベルの曲でしょうか?
2021-2022の課題曲から例を見てみましょう。
A,B,Cのグループの中から、各1曲ずつ選びます。
公式シラバスから一部を抜粋していますが、実際は各グループ10曲ほどから選べるので、選択肢は多いですね。
時代はバロックから現代まで、またジャンルもクラシックからジャズまでと、選べる範囲は広いです。
有名な曲から、聴いたことがない名曲や新曲まで知ることができ、新しい発見が多い課題曲になっています。
今回演奏した課題曲3曲は…
課題曲から、バロック、ロマン派、ジャズと幅広い時代やジャンルから選択しました。
①ペシェッティ「ソナタ8番よりアレグロ」(Pescetti/ Allegro; 4th movt from Sonata No. 8 in C))
②ショパン「マズルカ Op. 67 No. 2」(Chopin/ Mazurka in G minor, Op. 67 No. 2)
③マーサ・ミアー「Opening Night Jazz」(Martha Mier/ Opening Night Jazz)
参考楽譜: ショパン「マズルカ Op. 67 No. 2」より
もちろんただ演奏するだけではなく、各時代の演奏方法の違いや、曲のキャラクターを理解することも大事です。
音楽史を知ることは、Aural test(口頭試問)でも役に立つことなので、音楽史や時代背景、当時の楽器や曲の特徴なども併せてレッスンに取り入れていきました。
演奏以外に必要な準備は?
これまで書いてきたように、Practical Gradeはピアノ曲以外にも準備が必要です。他の課題も、試験直前に少し準備して対応できるようなのものではなく、日々の積み重ねが大事な内容になっています。
課題曲の他には、次のような3つの試験を行います。具体的な内容やどんな準備が必要か見てみましょう!
①スケールやアルペジオの課題(Scales and arpeggios)
グレード6からは、スケールだけでも
・#♭5個までのスケール(4オクターブ)
・反復スケール(2オクターブ)
・半音階スケール(4オクターブ)
と弾かなければいけないスケールの範囲も一気に広がります。
その他、#♭5個までの調や減7和音のアルペジオも加わるので、毎日コツコツと練習して、審査員に指示されたものをすぐに弾いていけるよう準備しておく必要があります。
②初見(Sight reading)
初見とは、試験会場で初めて見る楽譜を30秒ほどで準備し、実際に演奏することです。
グレード6になると、♯♭4つまでの長調・短調の曲が出てくる上、拍子も、変拍子(5拍子、7拍子など)が加わり、より複雑な内容になってきます。
試験官から楽譜を受け取った後の30秒は、とても短い時間です。
瞬時に、まずは基本的な曲の特徴を確認します。
何調か、拍子は?、曲のキャラクターは?強弱は?などを読み取り、30秒後には、12小節ほどの曲を正確に演奏しなければいけません。
<公式本から抜粋>
このようにグレード6の初見の曲にはタイトルもついているので、タイトルとかけ離れた演奏になってもいけません。
タイトルは、曲のどんな特徴を表しているのかな?ということも考えながら、
アーティキュレーションのパターンも瞬時に見つけて対応していかなければいけません。
初見の経験がある方なら、この課題が決して簡単ではないことが分かるかと思います。
③口頭試問(Aural)
グレード6になると、音楽史の基礎的な知識や、時代による演奏様式の特徴や変化などを知っている必要があります。
というのも、審査員が試験当日に弾く曲を聴いて、
・拍子、調性
・強弱やテンポ
などを判別して答えるだけでなく、
・曲の特徴から考えて、どの時代のどの作曲家か…
まで答えなければいけません。
その他、
♪2声のメロディーを聴き、上声だけ覚えて歌う
♪新曲視唱(審査員の演奏に合わせて、渡されたメロディーを歌う)
♪カデンツの判別(審査員が弾いた演奏を聴いて、使われたカデンツを答える)
などがあり、それぞれの項目をしっかり準備している必要があります。
レッスン時間内に、ピアノの課題曲、スケール等、初見、また口頭試問まで取り入れるのは、決して簡単ではありませんし、集中力も必要になります。
今回の生徒さんも、毎回90分レッスンでしっかりと取り組んでくれました。
もちろん課題曲やスケール等は、普段からきちんと練習を積み重ねてくれていたので、他のことにも時間をかけることができました。
結果は、Meritで合格!おめでとうございます!
結果は、わずかな点数差でDistinctionではなかったものの、Meritでの合格となりました。おめでとうございます!!
内容がとても濃く、求められることも多いグレード6の試験ですが、緊張もする中、試験当日しっかりと結果を出してきたのはさすがだと思います。
生徒さんご本人は、悔しい気持ちもあるようですが、必ず次に繋がる貴重な体験になったと思います。
試験は1人の審査員が決める結果でしかないので、必ずしも納得のいく結果になるとは限りません。ましてや演奏という、本来点数で評価できるものではないので、これからさらに素晴らしい演奏を聴かせてくれるのをとても楽しみにしています♪
私のレッスンでは、ABRSMの受検のためだけでなく…
①音楽が生徒さんの人生にとって大事な存在になること
②これからの時代を生き抜く「想像力」や「習慣を作る力」を育てること
③自分で理解し音楽を作っていく力を身に付けていただくこと
を目標にし、日々生徒さんの成長を願ったレッスンを行っています。
お試しレッスン(有料)もご用意しております。詳しくは、お問合せからお気軽にご相談ください。
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