イギリスでのピアノグレード受検!(Practical Grades)
ココナラでオンラインレッスンを受講してくれていた7歳の生徒さんが、去年イギリスで受けたABRSM(英国王立音楽検定)のピアノグレード5に、無事Distinctionで合格しました!
会場に行って受ける対面試験では、ピアノ課題曲3曲だけでなく、たくさんのスケールなどの課題、初見や口頭試問もあり、幅広い知識が求められます。
Distinctionは150点中130点以上の場合にいただけるので、全体的に高得点を取れていないと獲得が難しいです。
試験の際は試験官の細かい講評も届きますが、たくさんお褒めの言葉もいただいていました!
今回は、Practical Gradeの内容や難易度、また受検までの具体的な準備の仕方についても書いていきたいと思います。
長文になりますが、ぜひ最後までご覧ください♪
↓今回ご受講いただいたレッスンはこちら
<英国王立音楽検定(ABRSM)受検のための60分ピアノレッスン>
初見演奏・口頭試問、音楽理論の指導も取り入れたレッスン
ABRSM(英国王立音楽検定)とは?
ABRSM(英国王立音楽検定)とは、イギリス発祥の音楽検定で、毎年約90ケ国で実施され、毎年約63万人以上が受検する、世界最大規模の検定です。
その歴史は驚きの120年以上で、日本のYAMAHAのグレード試験のモデルにもなっているそうです。楽器演奏のグレードは1から8まであります。
グレード8は日本でいう音楽大学の入試レベルと言われており、内容は多岐に渡るため、難易度も高い試験だと思います。
課題曲はどんな内容?
①2年ごとに新しい課題に
ABRSM(英国王立音楽検定)のピアノグレードの課題曲は、2年ごとに新しい課題に更新されます。
基本的に、その2年間のうちに受検しなければいけません。(コロナのこともあり、ここ数年は例外もありました)
②幅広い時代から選べます
A,B,Cとグループに分かれており、各1曲ずつ選びます。
だいたい時代ごとに分かれており、各グループは10曲ほど。
つまり全30曲ほどの選択肢の中から、3曲を選ぶということです。
③様々な作曲家、ジャンルから選択できます。
有名な曲から、マイナーな作曲家の曲、この試験のために作曲された曲など様々な曲があり、必ず新しい曲にも出会えます。
またクラシック音楽だけでなく、ジャズもあるので、新しいジャンルに挑戦するいい機会にもなりますね!
今回演奏した課題曲3曲は
演奏した曲は、2021-2022のABRSMピアノグレード5の課題曲から3曲です。
以下のようなバランスのいいプログラムを組むことができていたのが、とても良かったと思います。
①ブルグミュラー「貴婦人の乗馬」(Burgmüller / La chevaleresque)
②チャイコフスキー「子どものアルバム Op.39〜第21曲 “甘い夢”」(Tchaikovsky / Douce rêverie: No. 21 from Album pour enfants, Op. 39)
③プロコフィエフ「子供のための音楽 “タランテラ” Op.65-4」 (Tarantella from his Musique d’Enfants, Op.65 No.4)
参考楽譜: ブルグミュラー「貴婦人の乗馬」
対面試験、Practical Gradeとは?
今ABRSM(英国王立音楽検定)のピアノの試験は、2種類あります。
1.Practical Grade
試験日に試験会場に行き、試験官と1対1で試験を受けます。
課題曲3曲だけでなく、たくさんのスケールやアルペジオなど、初見、新曲視唱なども含む口頭試験も含まれています。
2.Performance Grade
ご自宅などお好きな場所とピアノで撮影し、課題曲3曲と自由曲1曲のビデオを提出します。その際ビデオの編集はできないので、必ず4曲通して演奏したものを提出しなければいけません。Practical Gradeのように、スケールなどや口頭試問などはありません。
今回は、1のPractical Gradeについて解説していきたいと思います。
演奏以外にはどんな準備が必要?
これまで書いてきたように、Practical Gradeはピアノ曲以外にも準備が必要です。他の課題も、試験直前に少し準備して対応できるようなのものではなく、日々の積み重ねが大事な内容になっています。
次のように3つの試験に分かれています。
・スケールやアルペジオの課題(Scales and arpeggios)
・初見(Sight reading)
・口頭試問(Aural)
では、具体的に内容やどんな準備が必要か見てみましょう!
スケールやアルペジオの課題
グレード試験の初期の段階から(Initiel testやGrade 1)、スケールやアルペジオも順序だてて練習していけるように課題が出されています。
今回のグレードは5の2021-2022度の試験内容を見てみると、
①#♭5個までの長・短調のスケール(両手で2オクターブ)
レガートかスタッカートか、当日指定があります。
②反進行のスケール(両手で2オクターブ、D♭ majorとC# harmonic minor)
レガートかスタッカートか、当日指定があります。
③半音階のスケール(両手で2オクターブ)
左手はファ#、右手はA#(長3度/Major 3rd離れた音)と違う音から始まる、両手の半音階スケールを弾きます。
④#♭5個までの長・短調のアルペジオ(両手で2オクターブ)
⑤減7のアルペジオ /Diminished seventh(両手で2オクターブ)
なかなか多いですね!!
どの調のどのスケールを弾くかは全て当日指定され、試験官から言われたらすぐに弾かなくてはいけません。
スケール等の楽譜の持ち込みもできないため、暗譜もしていなくてはいけません。
普段からコツコツを練習し、指示されたらすぐに対応できるように練習する必要があります。
ただ正確に弾くだけでなく、音の粒が揃っているか、テンポは適切かなど細かく聴かれています。
初見(Sight reading)はどんなレベル?(例問付)
初見とは、その場で渡されるた初めて見た曲を演奏することです。
ABRSMの初見で、準備に与えられる時間は、わずか30秒。
これは試してみれば分かりますが、あっという間の時間です。
なんとなく使って無駄にしてはもったいないので、この30秒をいかに有効に使うかが鍵です。
例えば、ピアノグレード5の初見の例を見てみると、こんな内容です。
(ABRSM公式本より引用)
試験官から楽譜を受け取ったら、弾き始める前に、まずは次のようなことを確認しましょう!
1.調や調号、拍子を確認する
2.ここではAllegroなど速度記号などを見て、テンポを決める
3.全体的な強弱記号やアーティキュレーションを見て、曲のイメージを掴む
例えばこの曲を見てみると、フォルテやアクセントなどの強弱記号、スタッカートとスラーの対比などから、リズミカルで生き生きとしたキャラクターの曲だと想像できます。
弾くチャンスは1度限り!
弾き始めてから止まったり弾き直すのは良くないので、最初の準備がとても大事です。
30秒の準備時間にピアノで試し弾きも許可されているのですが、まずは音を鳴らしてみるまでに、上記の3項目をさっと、しかも正確に確認できなければいけません。
これを読んで「こんなのできない!」と不安になった方もいらっしゃると思いますが、私のレッスンでは、初見の練習も取り入れていますので、たくさんのコツも順序だててお伝えしております。
Aural test(口頭試問)はどんな内容?
最後にAural testです。ここまででも十分濃い内容なのですが、ここでもたくさんのことが求められます。
グレード5では、大まかに分けて次の3項目の内容から成り立っています。
①メロディーの復唱
試験官が2度弾いたメロディーを聴いて覚えて、歌うかピアノで弾きます。
②新曲視唱
その場で渡された音符を歌います。
③試験官が弾いた曲を聴いて、
・その曲について聞かれた質問を答える:強弱やアーティキュレーション、調、また、曲の特徴から考えられる時代や作曲者名などを答えます。
・曲の1部分のメロディーのリズムを覚えてリズム打ちし、拍子を答えます。
こちらも、日々の練習やレッスンで少しずつ訓練し、練習を重ねる必要があります。
特に③の曲を聴いて特徴を答える問題では、語彙力も求められますし、音楽史を学び、各時代の特徴や、その時代の代表的な作曲家の名前も知っている必要があります。
グレード5でも十分濃い内容ですが、グレード8に向け、より高度なことを求められるようになっていきます。
近い将来にグレード8を受検するときにも役立つよう、ただ弾くだけではなく、普段から視野を広くして、レッスンを進めていく必要があると思います。
レッスンでの様子は?
今回、ピアノの曲の準備は順調に進んでいたものの、ABRSMの試験では、各曲の特徴やコントラストをはっきり表現することがとても大事です。
そういったことも含め曲に取り組むのと同時に、音楽史も取り入れて各時代背景なども話しながら、全項目の準備を進めていきました。
普段は学校もあり練習時間はあまり取れなかったようですが、レッスン中のアドバイスを素直に実践し、コツコツと取り組んでくれていました。
初めは少し戸惑っていた様子の初見や口頭試問も、どんどん成果が出て、試験までには受検に問題ないレベルに達していました。
結果は、Distinctionで合格!おめでとうございます!
そして、会場での試験を終えて数日後、まずはオンラインで結果が届きます。
結果は無事Distinctionでした!
とても内容が濃く、集中力のいる試験だったと思いますが、講評から実力を発揮できた様子がうかがえました。
おめでとうございます!
今は、ピアノグレード6の受検に向け、音楽理論グレード5対策の勉強をがんばっています。
私のレッスンでは、ABRSMの受検のためだけでなく…
①音楽が生徒さんの人生にとって大事な存在になること
②これからの時代を生き抜く「想像力」や「習慣を作る力」を育てること
③自分で理解し音楽を作っていく力を身に付けていただくこと
を目標にし、日々生徒さんの成長を願ったレッスンを行っています。
もちろん実際にABRSMを受検するかどうかは、ご自由に決めていただけます。
レッスンについては以下のリンクをご覧ください♪
レッスンをご希望の方は、お問合せフォームからご相談ください。
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